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兄弟は7人、親想いの少年時代
ジュノー博士は1904年5月14日、フランス国境に程近いスイス北西部にあるヌーシャテルで生まれました。敬虔なフランス人牧師リチャードとジュネーブ出身の知的で優しい女性ジャンヌの子として生を享けます。兄弟は7人、マルセルはその5番目の子でした。 |
マルセルが少年時代を過ごしたラ・ショー=ド=フォン村はジュラ山脈の山間部にある長閑な小さな村でした。
1914年、第一次世界大戦が勃発、他の国々と同様スイスの食糧事情もどんどん悪くなっていきます。そんな中、リチャードとジャンヌは自分たちの食糧を削ってまで、困窮した人々を助けます。ジュノー一家は明日の糧にも困る状況に陥ってしまいます。しかし、不思議と飢えることはありませんでした。
興味深いエピソードがあります。父リチャードが教会でミサを行っていたときのことです。リチャードは、わっと叫び突然外へ飛び出しました。ミサに集まっていた人々は驚いてリチャードの後を追います。すると、教会の2階から幼いわが子が落ちてくるのを見事に受け止めたリチャードがそこにいました。「どうして子供が落ちるのがわかったのか」みな口々に問いただしました。「ミサの最中、突然子供の落ちる映像が見えた」というのがリチャードの答えでした。
そんなリチャードの“透視の才”に支えられたからでしょうか。ジュノー一家は苦境に陥るたびに、昔お金を貸した人が「返済が出来るようになりました」といってお金をもってきたり、村人が「食べ物を余分に貰ったから」といって差し入れにきたり、そのたびに メ奇跡 モが起きたのです。 後に目の前に爆弾が落ちるなど、ジュノー博士は何度も危険な目に遭いますが大した怪我もせず自らの任務を遂行できたのも、父リチャードの“才能”を受け継いだからともいえそうです。
1918年14歳になったマルセル少年は両親を助けるため、休みの日になると煉瓦工場で働きます。ところが1919年、住居としていた教会が火事で全焼してしまいました。悪いことは重なります。マルセルが心から尊敬していた父リチャードが心臓発作で急逝してしまうのです。15歳のマルセル少年は牧師であった父の志を継ぎ、困っている人や助けを求めている人にはすすんで手をさしのべる大人になることを誓います。しかし牧師になることはせず、医学の道に進むことを決意しました。
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